本棚って壁紙だ!

主に本の紹介、読書感想文、時には漫画、映画などエンタメ全般について綴る

日本人は日本を出ると最強になる 吉越浩一郎

吉越浩一郎
ISBN9784344023796
幻冬舎

 ヨーロッパ(ドイツ、フランス)を中心に、香港でも仕事をしたことがある著者が、日本における仕事を進める上での問題点、海外との違いから、決して日本を捨てるという訳ではないが、広い視野を持つためには、海外で働くということも視野に入れると人生が広がるよ、と説いた本。

 日本の事なかれ主義や、だらだらと何も決まらない会議、残業が多く効率の悪い働き方は、高度成長期までは何とかなったかもしれないが、グローバル化してしまった今現在、スピード感を持って仕事を進めていく上では問題点である。また、日本人は庇護されすぎており、自己責任で色々なことをやってみる気概が必用。教育により今までの様な言われたことを正確にこなすタイプより、リーダーとなれる人間が必用で、そのような人物なら海外のどこに出ても一人でやっていけるし、これからの日本を救うのはそういう人々だろうという内容。

 


 国外に興味があり本を読んだり情報を得ている人にはそれほど目新しいことはなく、タイトルと内容がちょっと違うんじゃないかと感じますが、書かれていることは至極真っ当でもっともに思います。例えば教育に関しては、未だに詰め込みで○か×か正解を求める教育を日本は行っているが、フランスでは答えのないようなテーマについて時間をかけて考えさせる試験がある。社会に出れば否応なしに競争に巻き込まれるが、学校では運動会でもお手々つないでゴールするのではリーダーとなれる人材は育たないのではないか、という点。

 また女性の働き方についても、女性は家事育児のため仕事を定時で上がる場合が多いが、これに対して働き方がダメだなどと言っているようではいけない。男性も効率を上げ定時で帰れるように意識を変革し、女性が働きやすく、女性の力を活力としようと書かれている。仕事は真面目に取り組むべきだが、あくまで人生の何分の一かを占めるゲームであり、仕事だけが人生ではない、ワークライフバランスのライフの部分をもっと大切にして人生を楽しむことが必用だとあり、日本の残業をせざるを得ない空気を批判している。

 日本という国は、安全で清潔であり、また時間に正確など暮らしやすい国であることは多くの方が考えていることだと思います。しかし逆に労働する側から視てみると、求められるクオリティの高さや正確さに縛られることにもなり、生きにくい世の中になっていることも否めません。
 また生きにくさという観点で言えば、自分たちと異なる価値観、多様性のある人はあまり受け入れられず、皆同じようであることが求められているように感じます。このようなことからも日本とは別の国に出て働いて広い視野を持った人達が増えてくれば良いなと思います。