プラチナデータ 東野圭吾
東野圭吾
ISBN9784344418844
幻冬舎
東野作品では「白夜行」や「容疑者xの献身」が好みです。他にも幾つか読みましたが、「手紙」は何となく単純すぎて浅いような気がしました。「秘密」も愛のある良い話で人気は高いけど、それ程ではないんですよね~個人的には。この作品はその中間くらいです。でも続きが知りたくなってページをどんどんめくってしまう話ですね。近未来SFミステリーエンターテイメントというくくりでしょうか。
渋谷で殺人事件が起こった。しかし警察は、DNA操作システムという新しい操作方法から割り出された犯人像を元に事件を簡単に解決してしまう。DNA操作が有効だと証明されたことになった。DNA法案ーDNA情報を国の管理の下で犯罪捜査に使用できる法案ーも国会を通過し、警察の捜査はDNA操作システムが有効な操作方法となっていく。
DNA捜査研究所の中心人物「神楽」は二重人格者で、彼が別人格になっている間に、天才プログラマーでDNA解析のシステムを作成した蓼科兄妹が拳銃で殺害されてしまった。使用された拳銃は、別に捜査されていた女性強姦殺人事件の犯人と同じ拳銃で、その犯人のDNAが解析システムで検索できないことから、NF13(Not Found 13)と呼ばれていた。
神楽は、蓼科兄妹の妹に付着していた犯人と思われる毛髪をDNA操作システムで解析すると、それが自分の毛髪であることを知り、もしかしたら別人格の仕業かもしれないと思い逃亡する。
こんな感じで物語はスタートします。後になって、ああアレかとなる伏線もあり、すいすいと読めて面白いです。難しいことを考えずに楽しめるエンターテイメント作品ですね。
以下は完全にネタバレします。未読の方は読まないで下さい。
プラチナデータの謎が解った時、なるほどと思いました。DNA等の個人情報を権力が管理する。ただその権力の中枢にいる彼らは狡猾で自分の個人情報は管理させない。プラチナデータとは本作のシステムでは検索されない特権階級のDNAデータのことです。単なる殺人事件の話ではなく、管理する側の陰謀、管理社会の問題点を突きつけた作品なのだなと感じました。
犯人の動機については、脳科学者が電気トリップで人格を操ろうとしていたという所が、ちょっと強引な感じはします。小説の謎解きとしては納得ですが、通常はこの立場の人がこんなことはしないでしょうと思います。DNA捜査システムに真っ向から反旗を翻した頭のキレる変質者が別にいるのかと思いました。
スズランについてはすぐに幻覚(もう一人の人格)だなと分かるのですが、最後にリュウが描いたスズランの絵を飾って陶芸に打ち込むあたりはちょっと感動です。スズランの元は蓼科兄妹の妹ということですが、彼女がどのようにリュウとうち解けていったのかが知りたかったです。
映画の方はまだ観ていませんが、どんな風に仕上げているのが観たいと思います。元々映像向けの作品で、映像にしたら更に面白そうだなという印象を受けました。小説の白夜行とテレビ版の白夜行は視点が違っててどちらも良かったですからね。
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