池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇 池上彰
池上彰
ISBN9784822274375
日経BP社
一見役に立たないような教養が、実は生涯に渡って役に立つ。実学ばかり学んでも先端の知識はすぐに陳腐化してしまうし、生涯に使える知のベースとなる教養をみんなが身につけるべきだという事を説く本です。
ハーバードやMITなど、一見最先端の学問を教えていると考えられるアメリカの一流大学では、実学だけでなく教養をとても重要視しているそうです。
例えば理系の学生がすぐには役に立たない歴史や哲学などを学ぶという事ですね。モノを開発する際にもテクノロジーを知っているだけではダメで、知識のベースとなる教養がないといいモノは創造できない。
日本では近年、即戦力を求められ実学ばかり教えていて、それが現在の日本製品の衰退に繋がってきたのではないかという考えがあり、大学でも教養を見直す動きが出て来ているそうです。
ここで言われている教養とはどういうことか、見出しをちょっと挙げてみます。
1.与えられた前提を疑う能力である
2.新しいルールを創造できる能力である
3.あらゆる変化に対応するための能力である
4.すぐに役に立たないから一生役に立つ
5.専門外の分野を学ぶことから始まる
6.四の五の言わずに本を沢山読む
7.「人間を学ぶ」ためには「歴史」を学べ
8.教養とは、つまるところ「人を知る」ということだ
9.目先の「合理主義」は非合理な結果を招く
10.教養がない「街」には人がこない
11.テクノロジーを担う理系こそ教養を学ぶ責務がある
12.本当の教養はムダなものである
例えば「新しいルールを創造できる能力である」に対してですが、日本はルールに従ってその中で色々動くのは得意だけれど、いざルールを変えられてしまうと、またそれに従って右往左往しなければいけません。
欧米は時々ルールを変える事があります。日本はそれに対して文句を言うばかりではなく、自らがルールを変えたり創れるようになる必要があり、それには教養が必要だということですね。踊らされるばかりでなく、自らが仕組みを作る側にまわらないといけません。
池上さんは現在、東工大で教鞭をとっているそうですが、理系だからといって、ボキャブラリー貧困なコミュ障ではダメである。理系だからこそものづくりに生かせる様々な知識が必要だという事を説いています。
もちろんこの本だけで教養がつくという事ではなく、東工大のリベラルアーツセンターの教授陣との対話を通して、広い知識の重要性、「教養とはこういうことですよ、皆さんもいかがですか」と語っています。日本人に教養がなくなってきたことへの警鐘や危機感も表れていると思います。
日本人が今後も世界の中で活躍していく上で、幅広い知識を身につけ海外の知識人と対等に接する必要を感じます。日本人の教養は大学時代で止まっていることが多い。一国のリーダーや企業のトップなどは、生涯に渡って教養を身につけていけるようにする。そういう勉強こそ大学で教えるべきだなと感じました。
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