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主に本の紹介、読書感想文、時には漫画、映画などエンタメ全般について綴る

新世界より 貴志祐介

貴志祐介
ISBN9784062768535, ISBN9784062768542, ISBN9784062768559
講談社

遠い未来。呪力という力(いわゆる念動力)を皆が持つ世界。子供達は思春期になるとその力が現れる。八丁標という守られた結界の中が世界の全て。やがて子供達は学校行事である夏期キャンプで冒険心を出し禁じられている場所へ。そしてふとした偶然から本当の世界の成り立ちを知ってしまう。

私は貴志祐介の著作では「クリムゾンの迷宮」や「天使の囀り」が好きですが、(「黒い家」も恐かった)それに次いで面白い作品だと思います。アイデアは25年以上前からあったそうで、ハヤカワSFコンテスト佳作受賞の「凍った嘴」がベースになっているとの事。(「凍った嘴」は活字にはなっていない) SFや超能力にアレルギーがなければ超お薦めです。物語開始から引き込まれ、貴志祐介お得意の気持ち悪い描写も冴え渡るSFホラー、エンターテイメント、大冒険活劇になっています。

文庫本では「上」「中」「下」の三冊からなりますが、試しに「上」だけ読もうと一冊だけ買ってきて読み始めたら後悔する事になるでしょう。読み始めたら止められないので続巻をすぐに買いに行く羽目になるからです。

呪力を訓練する学校に通ったり、少年達が禁を犯して冒険をし呪力を使って不思議な生物と対決する。呪力を魔法と置き換えれば、何となく和風のハリーポッター的な感じがしました。(自分でそう思って書いたのですが解説を読んだらそこにも書かれていた!) 気持ち悪い生物の描写は多々ありますが、ジュブナイルとしてもいいなと感じました。

影響を及ぼさない程度に、ちょっとネタバレしてしまうと、

 

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

 
新世界より(中) (講談社文庫)

新世界より(中) (講談社文庫)

 
新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

 

 

全員が呪力を持つ世界では、誰か一人でも攻撃的な人間がいると、大量殺戮という大惨事が発生してしまう危険性があります。(念じただけで一瞬で人を攻撃できるので) それを食い止めるためにありとあらゆる管理が行われるのですが、学校では子供の性格や資質などが評価され、攻撃的な子供が排除される事も辞さない社会になっています。

攻撃的資質を持つ場合や呪力が制御出来ない場合は、不幸にして悪鬼や業魔と呼ばれる怪物になってしまうのですが、主人公は様々な出来事や事件を通して子供ながらに、そういった世界への違和感や危うさに気が付いてしまいます。そして大人になったある夏の祭りの夜についに事件が...という話です。

根本にあるテーマはもう少し深いと思います。例えば角など一撃必殺の武器を持つ動物は同族同士で殺し合わない様な仕組みが組み込まれているが、強い武器を持たない人間にはそれがない。そういう生物である人間が文明により一撃必殺の武器を手にしてしまったらどうなるのか、という怖さですね。

ちなみにアニメにもなったようですが、私は全く見ていないのでどのようにアニメ化されたのかは知りません。ただ原作の雰囲気のままアニメ化したら、子供には見られないようなおどろおどろしい生物がオンパレードの気持ち悪い作品になったのではないかなと思います。

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